改正電子帳簿保存法と複合機について

 

2年間の猶予措置が今年12月に終了する「電子帳簿保存法」ですが、その対応準備に追われている企業も多いのかと思います。しかしこの法律は、前向きにとらえると企業のDX化に有効であるかもしれません。今回この制度を概観し、内容を理解し、さらに何に注意が必要なのかを詳細に解説します。

来年1月から対応が必要となるこの制度に、複合機も使いながら早めに対応してビジネスの効率化を図りましょう。

電子帳簿保存法について

電子帳簿保存法は、いわば「経理のデジタル化」のために作られた制度で、以下のような「お悩み解決」を目指しています。

  • もっと経理を楽にやりたい
  • 経営状況をリアルタイムに把握したい
  • 紙の請求書等を整理するために、わざわざ出勤したくない

このような悩みに対し、電子帳簿保存法は以下の環境を作って解決する、と回答しています。

  • もっとスピーディーに経理処理できる
  • 経理のデジタル化を通じて生産性が向上する
  • 経理担当者がテレワーク勤務できる

では、具体的にみていくことにしましょう。

具体的に何が便利?注意点は? Q&A形式でみていこう

Q:そもそもどんな制度?

A:以下のような場合のルールを定めています。

  • 会計ソフトで作った帳簿(デジタルデータ)を紙出力せずにデータのままで保存する場合のルール
  • 経費の領収書やレシートをスマホで撮影して経理処理・保存する場合のルール

Q:何が便利?

A:以下のようなことが出来るようになります。

  • 紙保管スペースが不要に
  • 日付や取引先名で検索可能
  • テレワーク可能に

Q:紙で保管しているわが社には関係ない?

A:いいえ、一部必須項目があり、対応が必要です。詳しくは後述しますが、「電子的に受け取った帳簿データ」は、電子的に保管する必要があります。

電子帳簿保存法の概要

この制度は、税法上保存等が必要な「帳簿」や「領収書・請求書・決算書などの国税関係書類」を紙でなく電子データで保存することに関する制度をいい、3つに区分されています。

①電子帳簿等保存【希望者のみ】

 自身で最初から一貫してパソコン等で作成している帳簿や国税関係書類は、紙出力して保存するのではなく、電子データのまま保存ができます。たとえば、会計ソフトで作成している仕訳帳やパソコンで作成した請求書の控えなどが対象です。

②スキャナ保存【希望者のみ】

 決算関係書類を除く国税関係書類(取引先から受領した紙の領収書・請求書等)は、その書類自体を保存する代わりに、スマホやスキャナで読み取った電子データを保存することができます。

③電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要です】

 申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務が課されている者は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやり取りした場合には、その電子データ(電子取引データ)を保存しなければなりません。

(注)記録の改ざんなどを防止するため、①〜③の保存を行うためには一定のルールに従う必要があります。

電子帳簿等保存について

先ほど説明した①〜③の項目を、もう少し詳しくみていきます。最初は、電子帳簿等保存です。事前準備や手続きはありません。

対象となる帳簿等は、以下のとおりです。

  • 会計ソフトで作成している仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳などの帳簿
  • 会計ソフトで作成した損益計算書、貸借対照表などの決算関係書類
  • パソコンで作成した見積書、請求書、納品書、領収書などを取引相手に紙で渡したときの書類の控え

スキャナ保存について

スキャナ保存とは、紙の領収書・請求書等をその書類自体を保存する代わりに、スキャナやスマホなどで読み取った電子データを保存することで代替えする行為です。将来に向かっての書類だけでなく、過去の書類もスキャナ保存できます(届け出が必要です)。

対象となるのは、以下の書類です。

  • 取引相手から受け取った紙の書類
  • 自身が手書きで作成して取引相手に紙で渡す書類

(書類の例:契約書、見積書、注文書、納品書、検収書、領収書など)

スキャナ保存の方法は、「スキャナ」や「複合機」で読み取った電子データのほか、スマホやデジタルカメラで読み取った電子データでもOKです。

電子取引データ保存について

前2項と異なり、この項目は「対応必須」です。具体的には、「申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務が課されているすべての方」が対応する必要があります。理解を深め、法律に違反することが無いようにしましょう。

対象となるデータは、「デジタルでやり取りしたデータ」です。これらのデータは、紙出力のみの保存では不十分で、デジタル保管する必要があります。また保管したデータは、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 日付(タイムスタンプ)が付されていること(一部の場合「不要」)
  • データを訂正した場合、その履歴が残ること。または、訂正できないこと
  • 不当な訂正削除防止の関する事務処理規程を制定し、遵守すること
  • 検索機能を準備すること

宥恕(ゆうじょ)措置の終了

この法律は、本来令和4年1月1日から施行される予定でしたが、世間に認識されるのに時間がかかり、対応が間に合わない企業が続出することが明らかであったため、2年間の宥恕措置(いわゆる、猶予期間)が設けられました。今年12月で、その措置が終了することから、すべての企業が、少なくとも「電子取引データ保存」については対応する必要があります。

電子帳簿保存法に複合機をどのように利用するか

さて、多くの会社では複合機を利用しているかと思いますが、電子帳簿保存法への対応に複合機はどのように役立つか、考えてみます。

スキャナ保存にどのように利用するか

複合機はスキャナ機能を持っていますので、電子帳簿保存法では「②スキャナ保存」に役立つのは明らかです。

具体的には、「保存する文書は、解像度200dpi以上でカラー画像であること」という制限があるのですが、複合機であれば条件をクリアするのは問題ないですね。

また、「過去の資料もまとめてスキャナ保存したい」という場合でも、複合機ならADF※で一気にスキャンできますね。

※ADF(Auto Document Feeder):自動原稿送り装置

まとめ

今回、電子帳簿保存法がスタートするタイミングで、その概要を説明して、各企業のすべきことを確認しました。現段階では、あまりパニックになる必要は無いようです。

確かに、今回法律が変わったことにより、各企業では新しい対応が必要になるという側面はあるのですが、企業のペーパーレスをはじめとしたDX化は、いずれ避けては通れない道です。もしそうであるならば、積極的に対応して、経理部門の合理化をすべきです。

何事においても、いやいややるより、前向きにやった方が効果が大きいのはご存じのとおりです。自社の複合機も有効に使いながら、新制度に対応していきましょう。